
その依頼は突然に。

この仕事をしていると数年に一度とんでもない依頼をしてくるお客様が来店される。
たしか2018年そのお客様は突然やってきた。
見たこともないウエスト200㎝越えのジーンズを2着持って。
アメリカのジーンズショップのディスプレイ用にリーバイスが製造していたウエスト200㎝超特大ジーンズ。
がなんと2着。これを使って”ジャケット+スラックス+ベスト”の3Pを作りたいとそのお客様は言い出した。
普段ならやりましょう!と引き受ける私ですがその時は断ってしまった。。
理由はいくつかあった。
持ち込み生地でのオーダーは生地の替えが利かないのでリスクが高い、しかもこの持ち込み生地1950年代のXXの
生地。昨今のヴィンテージブームでXXの状態が良いものだと価格が50~60万などざらにある。これミスったらやばい
な。しかもジーンズ(ズボン)の状態なので生地の取り分が全くもって謎。
一枚物の生地と勝手が違う。とりかかってから3P分やっぱり生地足りませんでした、、ではしゃれにならんし。
厚手デニム生地が縫える職人も探さねばならぬし。。うん あの案件は断ってよかったのだ。と自分に言い聞かせた。
《この特大ジーンズ集めるまで実に6年。。》
あれから数週間。断ったことに悶々としていたある日、そのお客様から電話が。
お客様「先日の3Pオーダーの件どうにかなりませんか??あの特大ジーンズ2本そろえるまで6年かかりました。
なかなか市場にでてこなくて‥」
集めるのに6年!!産声を上げた赤子が成長し来年小学校に入学します。な年月。私なら気が変わってしまうし趣味
嗜好も変わっているかもしれない。仮にも私、洋服再生アドバイザー。この熱量に答えるべきなのでは。。
私「作りましょう!とことんやりましょう!」これにてお客様と私の“デニムで3Pプロジェクト”がスタートしたので
す。
《デザイン監修をベルベルジン藤原氏に!》
“デニムで3Pプロジェクト”まずはデザイン決めです。今回の3Pのデザインはお客様と親交がありヴィンテージ界隈で
は絶大な支持を持つ”原宿の若大将”ことベルベルジンの藤原裕氏に依頼することに。
藤原氏「ジャケットはフロントは2つボタンにして袖は3つボタンがいんじゃない。このデニムのフロントの打ち込
みボタン再利用して使えば?フロントポケットはデニムのヒップポケット再利用して付けて。背中は生地足りればT
バックにしたいけど。あとステッチは勿論綿糸で‥‥」
大将の知識量凄まじく諸々、30分位の打ち合わせで大まかなスタイルは決定した。
ここまでくればあとは採寸して仮縫いからの本縫いでフィニッシュ。
しかしここである問題が。このお客様の体重がこの時100kg越。ダイエットして90kg前半まで落とすので採寸一旦保
留とのことで。数ヶ月のワークアウトタイムに入ったのです。そしてさらにパターンを依頼していた職人からも連絡
が「ざっくり生地足りるか計算してますがギリギリです。というか最悪ベスト無理かも。スーツなら取れそうです」
ぬっ。完成するのか。まるでサグラダファミリアの未完成の美のような。


《ワークアウトタイムを終えて》
遂にワークアウトタイムを終えてお客様が帰ってきました。確かに体重は減っている。よし。早速、体の採寸をしパタンナーが作ったパターンを実際のデニムの上に置いて、どのパーツをどこに使うか考えます。パズルです。そしてやはりギリギリです。





そして仮縫いはこんな感じ。問題だったベストの生地問題はご覧の通りハギハギですが数年着込むとアタリがでて唯一無二になります。ジャケット、スラックス共に微調整はありましたが概ね問題なし。
2020年10月10日遂に完成。そしてこの日はLevi’s ® VINTAGE DENIM JACKETS というGジャンに特化した書籍の発売日。原宿ベルベルジンにてイベント予定であったがコロナ禍により自粛。しめやかに記念写真を。デニム探し6年。製作2年。計8年。
”デニムで3Pプロジェクト”も終了。
無事お客様の洋服再生のお手伝いが出来てほっとしたのも束の間。このお客様からLINEが「関さんちょっと作
りたいコートがあって今度もすごいですよ‥‥」この続きはまた2年後くらいになるかもしれません。

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